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麻衣の顔には焦りの色が浮かぶ。
と言っても幽霊が怖いからではない。
このグループホームには認知症と呼ばれる老人達――昔で言うところの痴呆老人達――が集まって生活している。
そのため、早くに起き出してきた老人が徘徊し始めたのかと思ったのだ。
「何だ、気のせいか……。」
人影が消えたと思った扉は、東廊下の右から二番目。その事に安堵し胸を撫で下ろす。
詰め所の真向かいにあるその居室には「杉浦」という60代の男性が入所しているが、完全に寝たきり状態で歩き回る事など出来ないからだった。
やはり最近疲れているのかもしれない……。
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