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そんな大変な中で生まれた赤ちゃんは男の子で『風雅』と名付けられた。
新しい年を迎え、
愛華と愛音は中学3年生になり、風雅はつたい歩きから何歩か手を話して歩けるようになった夏休みのある日。
ママが倒れ、そのまま天国へと旅立ってしまった。
生まれてからアタシたちにはママしかいなかった。ママが高校生の時にママの両親は亡くなっているし、ひとりっこだから、文字通りひとりでアタシたちを育ててくれた。そんなママが死んでしまうなんて。
忠くんが戸籍上のお父さんになってからはまだ1年しか経っていない。風雅は血が繋がっているけれど、アタシたちは義理でしかない。
これから先、どうなるのかも不安だった。
お葬式が終わり、自宅に帰って来た
「大切な話あんねんけど‥」
真剣な表情の忠くんに呼ばれ、忠くんの向かい側に風雅を抱いた愛音と座った。
‥もうさよならだ。
直感的にそう思った。
いくら忠くんが良いひとだと言え、ママがいなくなった今、アタシたちはお荷物でしかないだろう。アタシたちがいなければ結婚だってできる。アタシたちに縛られることなく仕事に専念できる‥。
頭の中はマイナスなことでいっぱいになって、ついには涙まで溢れてきた。
「今までありがとう。これからのことなんやけど‥」
バクバクと心臓が忙しく動いている。
「‥4人で暮らそっか」
さよならを予想していたアタシはびっくりして忠くんを見た。忠くんはいつもみたいにへにゃって笑ってて、一気に引っ込んだ涙が嬉し涙になって流れ落ちた。
「一緒に、いていいの?」
「もちろん!家族は一緒におらな!」
「愛音ぉ」
「‥よかった」
「んふ、これからもよろしくなあ!」
「捨てられるかと思った」
「そんなわけないやん!3人とも大好きな響子さんが残してくれた大切な家族やもん」
忠くんはアタシたちをぎゅーっと痛いくらい抱き締めてくれた。
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