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サイドテーブルにトレイを置くと、こら。とその愛らしい泣き顔を無遠慮に覗き込んだ。
「今度は何を泣いてンのかな?みなとちゃんは。」
その先の言葉を知りつつも、俺はわざとそう投げかけた。
「…だって。…どうしよう。…あたしの所為で主任、処分されるって。」
「…」
「奥さんともめて大変な時なのに…どうしよう。」
ビスビスと鼻を啜る湊に、俺は。
「アホみなと。…お前が責任感じることなんて全然ねーの。被害を被ったのはお前だろ?」
「そう、だけど…でも、」
自分の事が原因で上司が処分されると知り、今度はその事に打ちひしがれるとは。
お人好しなんてレベルを通り越してるぜ。全く。
でも、そういうとこが。
なんつーか。
「可愛いよなぁ。…ホントお前は。」
真顔で呟いた俺を湊は戸惑い顔に見上げてきた。
笑み含みながら掌をそっと額に乗せ、するりと頬まで滑らせると、湊も涙を止め、ようやく微笑みを返してきた。
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