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「そうやって自分を差し置いてでも他人のこと思いやれるのはお前のすごくいいとこだと思うけどさ。やっぱ、思い悩んで自分の身体壊してる場合じゃないだろ?…何とかしなきゃな。」
桃の花に色づいた頬を愛撫しつつ、ん?と首をかしげて意見を呈すると、湊は素直にうんと頷いた。
「…心配かけてごめんなさい。大丈夫だよ、ジロちゃん。ここのとこずっと熱っぽくてだるいし、風邪だな~って思ってたから…そこに疲れが重なったんだと思う。」
「ん。…そか。」
確かに少し熱っぽい。
滑らせた掌を鎖骨まで持っていき、その辺りを探るように触れそう感じた。
「だったら薬飲んでさっさと治しちゃわねーとな。」
くすぐったそうに身を捩った湊は、あ、…と何かに思い当たり、困ったように眉をひそめた。
「そういえば、市販の風邪薬切らしてるんだった…」
「買って来てやるよ。駅前のドラッグストアなら、この時間まだやってるはずだし。」
答えた俺はそっと湊へ唇を寄せ、その温かな額に付けてから立ち上がった。
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