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それから十分ほど後。
真っ白な蛍光灯が煌々と燈った大型のドッグストアの店内を歩いていると、ポケットの携帯が震えた。
ディスプレイをを確認する。
───兄貴からだ。
そういえば午前中、第二子誕生を祝うメールを出してそれっきりだった。
「ハイよ、俺。」
『お、ジロー?すまなかったな、昨日診察の方。』
心なしハイテンションの声で詫びる兄貴に、なんの、いいってことよ、と笑って返す。
「どうよ。赤ン坊の方は」
『お~!おかげさまでな、順調順調。カンナもねーちゃんになったって喜んじまって病室じゃもー大変な騒ぎでさ…個室でよかったわ。』
「はは。…やっぱ嬉しいんだろうな、家族が増えるってさ。…」
姪の6歳のカンナがそれこそハイテンションに病室で歓喜する姿が目に浮かぶようで、俺も思わずクスリと笑った。
『美優の体調も安定してるし二人目だから慣れたもんだしな。明日は俺も普通どおり朝から診察戻るから。』
「ああ。分かった…」
兄貴と電話で話しながら感冒薬の販売棚まで来た俺は立ち止まり、手元にあった風邪薬の錠剤の箱のひとつを手に取り、ふと考えた。
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