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「そーだ兄貴。…早速で悪いけどさ。明日の朝、院の方任せていい?」
『おお、構わねーよ?…なんかあんのか?』
尋ねる兄貴に薬の外箱に書かれた説明書を何となく目にしながら、俺は続ける。
「湊がちょっと体調崩してさ…今日仕事場で倒れたんだ。」
『えっ!?みなとちゃんが?…大丈夫かよ。』
「さっき連れて帰ってきた。今はだいぶましみたいだけど。」
『珍しいな、いつも元気な娘なのによ。』
「ん。…そうなんだよ、な。…」
話しながらその時不意に頭の片隅を過って行ったほんの小さな閃きに、俺はふと視線をもたげた。
「で、…朝一で病院連れてこうと思って。」
『わかった。こっちは任せてオッケーだから。大事にしてやんな?落ち着いたらまたみんなでゆっくり会おうや。』
兄貴の言葉に俺も礼を言い、ひとまず電話を切った。
目を細め薬の箱をじっと見やったまま、また一考し。
そして俺は、手にしていたそれをそっと元の棚へと戻した。
それから棚越しにあちこち視線を配ると。
一番近くを歩いてた、白衣を着た薬剤師らしき店員の背後へと小走りに近づき、
すんません、ちょっと。と呼び止めた。
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