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信じ難いほど柔らかい温もりにもっと触れていたい気持ちを諌めつつ。
俺は緩笑を浮かべ、ジャケットのポケットから小さいレジ袋を取り出して、はい、と湊に呈した。
「どうぞ。お嬢さん。」
「あ、ありがと。」
今しがた買ってきた風邪薬だろうと、湊はニコリと返して袋の中を覗いた。
「…?」
そして袋に手を入れ、やけに細長なその箱を取り出し認めた湊は、へ…?と目を丸くし俺を見てきた。
「ジロちゃ…これ、…」
その妊娠検査薬の箱を握ったまま戸惑いに眉根を寄せ頬を染めた湊に俺は静かに言った。
「みなとさ。…先月生理来てないだろ?」
戸惑うように俺を見上げてた目がギョッとしたように丸くなる。
「な///、…何で分かるの?」
「そりゃ半年近くも一つ屋根の下に暮らしてりゃ、俺にだって分かるって。」
心底恥ずかしそうに火照った頬を両手で包んだ湊はうろたえながら、
「…ってか、…すっかり忘れちゃってた。」
自分の身体の事なのに、…と俯き軽く打ちひしがれる様子の湊の頭を優しく撫でて。
「仕方ねーって。ここ数日仕事場のゴタゴタで大変だったんだ。」
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