7910人が本棚に入れています
本棚に追加
襟元に顔を埋めたまま小さく幼気な声で湊が言った。
「…嬉しくないわけないよ…。ジロちゃんがそんな風に思ってくれてるなら、あたし、」
顔を上げ、間近からはにかんだ笑顔でじっと俺を見つめながら。
「あたし、何にも恐くなんかない。…から。」
理由は分かんねえけど、その甘く優しい湊の笑顔を捉えた時。
直感的に思ったんだ。
奇跡が起きる、って。
そもそも奇跡ってなんだ?
ありえない状況下に、とんでもなくありえないことが降って湧くこと?
そうじゃない。
奇跡の種はほんとはそこらじゅうに散らばっていて、
手繰り寄せて大事に守って、そして花開かせるのは、
俺達自らの手なんだって。
そんな風に、思ったんだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!