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ぐっとあたしを睨み据えたまますっくと立ち上がって、すり抜けて出口へ向かおうとしたカナちゃんの背中に、
「あっあの、ちょ、待っ…」
って声を掛けかけたけど。
あたしはその先の言葉を、飲み込んでしまった。
待合に居合わせた他の患者さんが不審げにこっちを見てるのが分かって、それ以上言葉を紡ぐ事ができなくなっちゃって。
ギュッと唇を噛んだままあたしが顔を顰めるしかできないのを、振り返り見届けたカナちゃんは、
ふん、みたいに前を向いてそのまま整骨院を後にしていった。
「ど、どうしたの?みなとちゃん。カナちゃん、何だか怒ってるみたいだったけれど…」
受付から見ていた橋田さんも心配して、ひそひそとあたしに聞いてきたけど。
「だ、大丈夫です。…彼女なんかちょっと誤解してるみたいで。…また今度会ったら、説明しときます~」
あたしはできるだけ明るく答え、彼女のことはとりあえずそっと胸の内にしまって、その日の整骨院のお手伝いに打ち込むことにした。
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