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時刻が午後八時を回って、受付の橋田さんが一足先に帰宅し、診療の終わった整骨院はあたしとジロちゃんだけになった。
どはっと溜息つきながら、あたしが酷くノロノロと首にスヌードを巻いてると。
「…どーしたよ。マジで。」
低く心地よい声に振り返ると、診察着を脱いだジロちゃんが顔を曇らせてあたしをみていた。
いつの間に淹れてくれたのか、手にした二つのカップから、アールグレイのいい匂いが立ち込めている。
「あ、ありがと…ジロちゃん。」
「ん。ちょっとそこ座んな。」
難しい顔で、ジロちゃんがあたしの足元のスツールを視線で促し、
あたしは素直にそこに座った。
ジロちゃんも脇のサイドワゴンに紅茶を置き、向かいのスツールにゆっくり腰掛けて。
「話して。何悩んでるの?」
って優しく尋ねてくれた。
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