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けど、数秒ほどして。
「…ワオ。」
不意に耳に囁かれる、掠れた感嘆の声。
恐る恐る顔を上げれば、目の前にある凛々しく強かな光を宿した茶色の双瞳に、咄嗟に竦んだ。
更にジロちゃんはただでさえキラキラの瞳に、ここぞとばかりに艶麗な笑みを含ませた。
「…みなとから誘われるなんて。明日は雹が降るかな」
くくっと喉を鳴らしながら言うジロちゃん。
いつもなら顔を顰めて、イジワル!って返してるとこだけど…
あたしは火照った顔を横に振って、その逞しい首元にしがみついた。
「けどマジで…疲れてない?」
案じるように、さっきよりもう少し潜められた低い声。
平気だから。だからお願い。
って、請うようにジロちゃんの頬にキスをしたら。
長い溜息が耳をくすぐってきてそして。
「…知らないからな。…煽ったのはみなとだぞ?」
返された強かな甘い声に、
大きな肩にギュッとしがみついたまま、あたしは目を閉じゆっくり頷いた。───────
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