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か細い間接照明の灯りに浮かび上がる、凪の海のようになだらかな白いシーツの上に、俺は湯上がりの湊の火照った身体をそっと下ろした。
少し乱れた呼吸が肩を上下させ、身をぐったり投げ出している。
全身が薄明かりに見て取れるほどに淡い桃色なのも、厳密には湯当たりのせいではなく。
夜伽の舞台をここに移すまでに、バスルームでイヤというほど施した“前置き”のせい。
背に触れたシーツのひんやりした感触に少しだけ意識が覚醒したのかもしれない。
「ジロ、ちゃん…」
甘い声で呼びながら、どうにかというように悩ましげに眉を寄せたまましばらくぶりに俺を見上げてきた。
「…まさかここで降参?」
笑み含んで尋ねるとうっと喉を詰まらせ、そして恥らいながらシーツに突っ伏してしまった湊を、俺はクスリと笑った。
のっけから飛ばしすぎたか。
と少しだけ己を省みては見るものの。
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