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がちゃり、と診察室の扉が開いて、勢いよくその人が顔を覗かせた。
「西谷さんと山崎のおじーちゃん、どーぞ。」
張りのある伸びやかな低音ボイスに、呼ばれた二人の患者さんがそれぞれ、はい、と返事をして立ち上がる。
呼ばれてないあたしも勢いよく扉の方を見て、そしてあわてて隣のトモカにも脇を小突いてそっちを見るよう促した。
触らなくても分かる、柔らかそうなダークブラウンの髪に、スッと切れ上がった柳眉。
その下の瞳は見るものに反らす事を許さないほど綺麗で。
筋の通った鼻と、ほのかな笑みをたたえた大き目の口元。
引き締まった頬と顎のライン、その下方に、これでもかといわんばかりに男らしくて色っぽい首筋が覗く。
そんなジロー先生を、まるでカミナリに打たれたみたいに立ち尽くして呆然と見上げてるトモカの気配に、あたしはしてやったりと密かに心で笑った。
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