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「あ!!ホントだ!」
月守整骨院と書かれた表の看板灯は消えてるけれど、医院扉の透かしガラスから、煌々とあたたかな光が漏れていた。
「…もしかしてジロー先生かも!?」
カナがそう声を弾ませて、この暮れかけた冬の空の下にも頬を桃色に染めたのが分かって、私は苦笑いした。
「…ねえ、そーだ!ちょうどいいじゃん、カナ。もしジロー先生が居たらさ。この間の話。思い切って言っちゃえば?」
って私がしたり笑って提案すると。
神妙な顔でこちらを見返したカナは、ゴクリと固唾を飲んでから、ちょっと顔を顰めてそして。
「めっちゃ緊張するけど…うん。これってチャンスかも、だよね…ちょっと覗いてみる。」
ってまっすぐ私を見て、頷いた。
「頑張っておいで、カナ!決着つくまで、私待ってるから」
ありがと、ってカナが私に告げて。
そして私たちは意を決したように足を踏みしめながら、暮れなずむ坂を整骨院の方へと近づいて行った。
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