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何となくその声に聞き覚えのあった俺は、図らずも一瞬眉間を指で押さえてしまった。
どうやら既に声の主は休診中の医院の待合に上がりこみ、診察扉のすぐ外に立っている模様。
「…はい?」
低いトーンで答えると、
「あっ!…その声、やっぱジロー先生だっ♪」
っとやにわに声を弾ませるそいつ。
どはっと溜息をつき俺は仕方なく、
「はい。ジロー先生です。…」
と答えた。
「先生、あの、…あたしです。氷室カナです。」
「うん。…知ってる。ちょっと待って。」
立ち上がり、診察室の扉を開けると、部活ジャージ姿の氷室カナは俺を見上げニコニコと立っていた。
「こ、こんばんは、先生。」
「ハイこんばんは。…っつかどうした?今日うち休みだけど?」
「うん。…あの、明かりがついてるから、もしかしてジロー先生がいるかもって思って、、で、覗いてみたらやっぱりホントに居て、…あの、…」
しどろもどろに言いながら恥かしそうに俯く彼女だったが、俺はやっぱり無遠慮に大きめな溜息をついた。
「そっか。…」
「そうです…」
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