9.~Side-Jiro-3~

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「ん。もちろん不倫なんてサイテーだよ。…でも安心して?俺もみなともそういう部類の人間じゃないからさ。…。」 と俺はニッと笑い、氷室カナの目の前に左の掌を差し出した。 そこに輝く銀色のリングを見た彼女は言葉を失い、見開いた目を数回瞬かせた。 その弾みでパタパタと零れ落ちた涙の粒は、透明な“鱗”のようにさえ見えた。 「…え…何で…?」 ショックなのか、それとも少し安堵したのか分からないが、掠れた声でそう言った氷室カナ。 「…」 「だって、ジロー先生いつもは指輪なんて…。」 うん。と俺は神妙顔に戻って頷いた。 「一応正当な理由はあるんだ。…だけど俺も休診日しか指輪できないのは、すこぶる不本意なんだぜ?」 「…」 「結果的にこうやってキミを誤解させたのも俺だし。そのせいで大事な奥さん煩わしちまったしな。…」 あ、…と表情を強張らせた氷室カナに、俺は慌てて 「キミを責めてるんじゃないぜ?」 と優しく投げた。 .
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