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―――春、桜並木の下。
隣には栗色の緩いウェーブのかかった髪を揺らす幼馴染の女の子。
街は朝の優しい日差しに包まれ、ポツポツと制服を着た学生達やスーツ姿のサラリーマン。
今日から、こんな景色を毎日の様に見ることになる。
…こんなに新鮮な気持ちもいつしか当たり前の様な日常に溶けていくのだろうか?
ゆっくりと流れる風景を眺めながら歩く俺…吉野幸介は、ポカポカの陽気に誘われるままに大きく欠伸をした。
「――ぁふぅ………ん?どした?」
欠伸の影響で少し景色が涙で歪む俺の視界に、隣に並んでいた少女の顔が映る。
少女…瀬川夏希は不思議そうな顔でこちらを覗き込んでいた。
怪訝に思い、どうした?と尋ねてみたのだが…彼女は小さく首を傾げ、すぐに言葉を発する訳でもない。
そして彼女の右手がふわりと彼女のぷっくりとツヤのある唇を包み、先ほどの大きく口を開けた俺の欠伸とは間逆、小さな欠伸をして、彼女は慌てて目をこする。
「…コウちゃんのあくびがうつっちゃったよ…えへへっ」
照れる様に笑う夏希は、誰が見ても必ず口をそろえてこう言うだろう。
天使だ、と…
夏希は中学の頃から守りたくなる女の子ランキング堂々の1位を図らずも得ている。
その小さな身長に、華奢な体つき…
そして穢れを知らない様な優しい笑顔に、何人もの男達が惹かれていた。
良く夏希と一緒にいる俺は、やはりというべきか…中学当初から、相当な嫉妬の視線を浴びている。
実の妹の様に接してきただけなのだけれど…
でも確かに幼馴染の俺から見ても、コイツは凄く可愛い女の子だと思う。
肌はつやつやだし、髪の毛もウェーブがかってはいるもののとてもサラサラ。
特に、その見た目に不釣り合いなほどに自己主張の強いその二つのふくら――…‥
「コウちゃん…?どうしたの??」
「はっ!俺は…」
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