16人が本棚に入れています
本棚に追加
―――何て目で夏希の事を見てしまったのだろう…
俺は彼女の事を幼い頃から妹のように思い、守ってきたではないか!
小さな自己嫌悪に襲われつつも、「男の性“サガ”さ…仕方ない!」と、正当化に走る自身の悪魔に大きく頷く。
その二つのロマンが全て悪いのだ。
「急に頷いたりして…ホントに変だよ…熱でもあるの?」
心の底から心配しているのだろう。
不安そうに少し目を潤ませた夏希が、ゆっくりと右手を俺の額にあてた。
「―――ッ」
ーーー瞬間、俺は言葉を失う。
先ほどから凝視していた、夏希の胸元…
そこから突如、拳大の小さな炎が熾(おこ)り、轟々と唸りをあげた。
「コウ…ちゃん…?」
俺の様子を伺う様な声も耳に入って抜けていく。
彼女の炎は…純然とした白だ。
「すげぇ…今日なんかクジとか引いちゃえよ…!」
興奮した俺は、我を忘れて勢い良く夏希の小さな両肩を掴む。
彼女は急に掴まれた事に驚いたのか、目を見開いて頬を辺りに舞う桜の様な色に染めた。
「はぅ…今日のコウちゃんは…何だか変だよぅ…」
その小さな体を僅かに震わせながら少しだけ俯き、右手で左手を包むような形を胸元に作り上げる。
だが、俺はその様子にも構わず夏希の右手を掴んで引っ張り出した。
そして再び目を見開いた夏希を、近くのコンビニに入る。
「あぅ…コウちゃん?何でコンビニ?」
「ああ、お前アイス食べたいだろ?買ってやるから選べよ。」
「えと…まだ春だよ…?」
「いいから!」
必死な俺の様子に戸惑った表情をしながらも、夏希はおずおずと小さなその指で桃のアイスを指差す。
最初のコメントを投稿しよう!