第1章 金色の少女・前編

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突然な話だが、俺こと吉野幸介は触れた人間に浮かぶ炎が視える。 いや、炎という表現は正しいか分からない。 実際には炎の様に揺らめく“何か”だ。 ただ便宜上、俺は“炎”と呼んでいる。 気付いた時にはソレが視えていて、気が付けばソレが何なのかを理解していた。 …何故だかは分からないけど。 「吉野…君は人の話をちゃんと聞いているのか?」 ―――おっと、つい夏希のびっくりする程の白い炎を思い返してボーっとしてたか。 声に反応し、下げていた目線を上げる。 そして目の前に立つ女性…俺のクラスの担任である朝霧雫に目を向けた。 彼女は訝しげに切れ長の目を眼鏡の奥で鋭く細め、その眉間にはうっすらとシワが刻まれている。 そして、その視線をこちらに向けていた。 「まったく…君は授業初日から遅刻か…入学式も確か遅れて来ていたな?」 呆れる様に小さく息を吐き、両手を自身の腰に当てる。 その括れたラインに若干見とれつつ、ポリポリと頬を掻いた。 「えと、でもそれは夏希も同じじゃ…?何で俺だけ…」 …そうだ。 確かに俺は入学式も今日も遅刻したが、それは夏希だって同じだ。 しかし朝霧はやれやれと呟き、小さくため息をつく。 そして切れ長な目を一層鋭くさせてこちらを見据えた。 「それだ。その反省の色の見えない態度が良く無い。それに遅刻の原因は恐らく君だろう?」 「…まあ、その事については認めざるを得ないです…」 「そして何より、私は男が嫌いだ!」 「な、なんだってー!」 理由が酷すぎる。 …この学校ではそんな差別的な事が許されるのか? 「許される!私が許す!!」 「唯我独尊!?てか心を読んだだと!?」
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