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突然な話だが、俺こと吉野幸介は触れた人間に浮かぶ炎が視える。
いや、炎という表現は正しいか分からない。
実際には炎の様に揺らめく“何か”だ。
ただ便宜上、俺は“炎”と呼んでいる。
気付いた時にはソレが視えていて、気が付けばソレが何なのかを理解していた。
…何故だかは分からないけど。
「吉野…君は人の話をちゃんと聞いているのか?」
―――おっと、つい夏希のびっくりする程の白い炎を思い返してボーっとしてたか。
声に反応し、下げていた目線を上げる。
そして目の前に立つ女性…俺のクラスの担任である朝霧雫に目を向けた。
彼女は訝しげに切れ長の目を眼鏡の奥で鋭く細め、その眉間にはうっすらとシワが刻まれている。
そして、その視線をこちらに向けていた。
「まったく…君は授業初日から遅刻か…入学式も確か遅れて来ていたな?」
呆れる様に小さく息を吐き、両手を自身の腰に当てる。
その括れたラインに若干見とれつつ、ポリポリと頬を掻いた。
「えと、でもそれは夏希も同じじゃ…?何で俺だけ…」
…そうだ。
確かに俺は入学式も今日も遅刻したが、それは夏希だって同じだ。
しかし朝霧はやれやれと呟き、小さくため息をつく。
そして切れ長な目を一層鋭くさせてこちらを見据えた。
「それだ。その反省の色の見えない態度が良く無い。それに遅刻の原因は恐らく君だろう?」
「…まあ、その事については認めざるを得ないです…」
「そして何より、私は男が嫌いだ!」
「な、なんだってー!」
理由が酷すぎる。
…この学校ではそんな差別的な事が許されるのか?
「許される!私が許す!!」
「唯我独尊!?てか心を読んだだと!?」
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