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*吉野幸介の視点
ーーー俺が美琴と一緒に暮らし始めて数日。驚きの新事実だ。
このワガママ女王、神崎美琴は信じられないほど料理が上手い。
事件が起こったあの日の朝、食った味噌汁は、夏希でなく美琴が作ったものらしい。
何度か手料理を食べた今でも、にわかには信じられん。
「今日の晩飯何~?」
「ちょっと節約で、豆腐ハンバーグよ。」
キッチンにいる美琴の後ろ姿に何だか凄い有り難みを感じざるを得ない。
…俺は、このチカラのせいで母さんに愛された記憶はほとんどないし。
暗くなりかけた気持ちを紛らわそうと、テレビを点ける。
すると、「超能力者特集」といった内容の番組で、胡散臭い学者が長々と語っていた。
「…はい、お待たせ。」
「おおー今日も旨そうだ!!」
「はいはい。」
美琴は、料理に対する俺の褒め言葉を毎回の如くスルーしている。
…お世辞じゃないんだけどな。
「てか、この超能力者は身近に!って、かなり胡散臭いよな?」
「…そう?…居るわよ、あたしの身近に。」
「は?…誰??もしかして3組の竹中か?確かにあいつの投げるフォークは超能力みたいにストン…と……!」
「…誰よそれ?あたしが言ってるのは、あんたの事!」
美琴の言葉に一瞬ポカンとする。
美琴は着いていけてない俺にイライラしたのか、眉間に皺を寄せ始めた。
「だから!あんたのその運を見るチカラ…超能力じゃないかって事よ!!…ホンットあんたバカぁ?」
「それなんてアスカ!?てか、そうだったのか…!」
今まで、変なチカラだと思っていたが、超能力…いい響きだ。
自分が超能力者だ、と言われると何だかとても強くなった気にすらなる。
「…でもさ、超能力ってもっとこう…念力とか発火とか…すげぇモンだと思ってたよ。」
「いや、あんたのそのチカラも十分すぎるくらい凄いわよ…。」
「じゃ、つまり世の中には、もの動かしたり、火ぃ吹いたりできる凄い奴らが実在すんだ!…すげーなぁ…。」
今まで信じられなかったもの。
それが実在すると分かれば…
男なら誰しも、胸を高鳴らすものである。
「…火を吹く人ならサーカスにだって居るでしょ?…ホンット、男って子供よね…?」
「なにお!…女はロマンってもんがわかんねーよなぁ!」
「何ムキになってんの?キモイ。」
「…グッ…。」
…これは一本取られたな。
俺のハートはブレイクダンス。
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