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「調子はどうですかな、南野くん」  気味の悪い呼び掛けに教室内へ視線を戻すと、ゴシップ屋がいた。周囲をエフェクト処理したかのようにきらきらした空気をまとっている。  ゴシップ屋なんて異名もなく、すっきり清楚な容姿にすればそこそこ人気も出るだろうに。 「さあ、可もなく不可もなくってところかな」 「そー。ところで、この前のことで少しお話しがあるんだけど」 「この前のことって?」  標準装備しているはぐらかしを使用したが、ゴシップ屋は微動だにしなかった。 「この前のことは、この前のこと。なんなら、ここで話してもいいんだよ」  学外の問題に手を出した途端に、自分の身の回りに波風が立ち始める。どうして懸案事項というものは重なるのだろう。  これだから、探偵ごっこなどしたくないのだ。 「わかった。移動しよう」  満足げに頷くゴシップ屋のあとに付いて教室を出ると、途端にひそひそと同情めいた会話が洩れ聞こえてきた。
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