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仕方なく、横に並んでごく自然な世間話の風で切り出す。
「それで、用件は?」
「廊下で話しちゃっていーの」
「こんな注目を集める人間と人気の無いところに行くほうが目立つよ。このまま歩きつつ、自然に話して」
ゴシップ屋はなるほどと頷きつつ、有能なビジネスマンよろしくスマートフォンを取り出す。この学校にゴシップ屋の歩きスマホを注意できるやつはいない。
「南野が口を割らないから、あれから調べてみたの」
あの放課後以来、追及がないのでそんなことだろうと思っていた。
僕と彼女の過去は、当時から別段隠していなかった。ゴシップ屋の情報網を持ってすれば、僕らの関係にたどり着くのはそう難しいことではないだろう。
これはいわば、二重底だ。過去の僕と彼女の関係を掴ませることで、その奥にある今回の一件の隠れ蓑とする。
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