プロローグ

4/7
30人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
「違う。中学のときの同級生」 「そう、同級生だったの。どうりで見るからに交友関係の狭そうな南野が、進学校であるI校の子を捕まえてるわけだ」  僕の否定など初めから存在しなかったかのように、ゴシップ屋は勝手に話を発展させる。  事実とは、得てして抹殺されてしまうものだ。  けれど、歴史の影で捻じ曲げられていった数々の真実と同じ末路を辿るとしても、否定を重ねずにはいられなかった。 「あいつと僕とのあいだに恋愛関係なんて、過去から未来のどの部分を抜き出しても成立してないよ」 「あら、そんなことを証明できたなら、南野は人類の歴史に名を残せるね」  苦虫を噛みつぶしたとしても、もう少しマシな気分だったろう。  ゴシップ屋の指摘はもっともだ。これから先、佐和子と恋愛関係に発展しないことをどうして証明できる。  人間の感情に法則なんてない。人の心を理解しているつもりでいるのがどれだけ愚かしいことか、嫌というほど痛感したというのに。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!