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強がってる?
…………そうかもしれない。
だけど、きっとあたしには誰が来るのか最初からわかっていたんだわ。
「すごいね、なんにもない」
教太郎。
この家に来るのはあなたで2人目ね。
そう思っただけで胸の奥がしめつけられるように痛む。
だけど、最後のお客が貴方で良かった。
「良かったら、珈琲飲みに行かない? 近くに美味しい喫茶店があるんだ」
優しい顔で、優しい声で。
あの時のように、忘れるために。
ほんとはね、気付いてたの。
全部、気付いてたの。
黒田先生の気持ちも、あたしの気持ちも。
だけど甘い所だけをなめてたら、いつの間にか麻痺して本当に大事な事に気付けなくなってた。
……もしかしたら、見ないフリをしていただけなのかも知れない。
だけどね、いつだってあたしを勇気づけてくれるのは苦い珈琲だった。
だからさよなら、黒田先生。
そしてさよなら、弱かったあたし。
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