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走って家に帰り慌ただしくドアを閉めた。
自分しかいない静かな空間にその音だけがこだまする。
『トンッ』と白い壁に背中を預け、急に足の力が抜けたのかズルズルとその場にへたり込んだ。
ドウシタライイノ…。
掻きむしるように両手で頭を抱える。
トウシタラ貴方ヲ独リ占メデキルノ?
ワカラナイ…ワカラナイ…ワカラナイ………………答エガ見ツカラナイ
刻は日没となり夕日が窓の向こうで沈んでいく。
それに気付かず電気を点ける事も知らない私を、違和感なく闇が優しく包み込む。
唯一、闇に溶け込めなかった小さい物体がピンクの光を放ち振動とともに綺麗な音を奏でて鳴り響いた。
「あ…ケータイ」
ゆっくり顔を上げ音の方へと向ける。
忙しなく震える物体とは逆にゆっくりと動き手にとる。
光ディスプレイにはとても良く知っている名前が表示されていた。
私の恋人…
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