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「もしもし?」
『あ、柚李(ゆずり)?夜の収録がキャンセルになったんだ。…だから今から逢えない?』
「今から?」
時間を見ようと左腕につけた時計に目線を移し驚いた。
いつの間にか時間は7時を過ぎていた。
いったい何時間一人で考えていたのだろうか。
そんな事を思いながら『やっぱ急には無理だった?』なんて申し訳なさそうな声で言う彼に返事をした。
「ううん、大丈夫だよ。場所はどうする?」
待ち合わせ時間、場所を決めて他愛のない話を少しした後に電話を切った。
今回は珍しく私の家に行くと彼は言った。
いつもは彼のオススメする洒落たレストランや、静まり返った公園で待ち合わせなのに。
しかし、あまり気にする事もなく立ち上がった。
「早く用意しなきゃ」
帰ってきたままのため、格好もそのままだった。
とりあえず電気を点けようと、スイッチがある方へ一歩踏み出す。
「やば…」
暗い中に長時間いて大分目が慣れていたとはいえ、全てが見えるという事ではない。
そのため周囲の障害物が分からず、踏み出した足で堅い何かを踏んづけてしまった。
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