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青い春の空を仰ぐ僕の穏やかな時間に、いつもは無い煩い声が割り込んできた。
僕は不快な声にうんざりして、声の主を確認した。
ワックスで散らした黒髪に、目付きの悪いその男は2組の堂島だ。
いつも一緒に居る遠藤と名護も連れている。
「こんなところでかくれんぼかぁ?逃げたつもりかよ?」
悪そうな笑みで言う堂島の視界の先に居るのは、確か同じ2組の須田だ。
いつも黙っておとなしそうな、悪く言えば陰気な奴で、伸ばしっぱなしの前髪が顔半分を隠し、名前と相まって皆から“すだれ君”と呼ばれていた。
勿論それは“愛称”ではなく、苛めに似たあだなだ。
須田は堂島達のカモにされているのは有名な話だった。
「栄路ぃー俺さー最近身体鈍っちゃって、ボクシングしたいんだわー♪」
堂島にそう持ちかけるのは遠藤だ。
「それならサンドバッグが必要だよなー??」
なんて古くさいベタな苛めなんだ。
あーあ。今日は運が悪い。
こんな場面に遭遇するなんて…。
自分自身も苛められやすい体質の僕は、とにかく堂島達が去るまでおとなしくしていた方が賢明だと思った。
下手に存在に気付かれれば、自分も対象にされかねない。
堂島と遠藤は楽しそうに須田を殴る。
後ろでそれを見て笑っているのは、オレンジに染めた短髪にグリーンのメッシュを入れている名護だ。
いつ見てもトリッキーな頭。
僕はそんな風に時々様子を伺いながら、早く去ってくれることを願った。
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