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「おいコラそこの二人、ちっとは回りの目を気にせんかい。お客が減ったらどないすんねん」
「そうは言ってもなぁ久嗣。ここには今私らしかおらん。」
「もし誰かに聞かれたら、ゆぅとるんや。知らんぞー、飯食えんくなっても」
「ありもせんことほざくな」
「ありもせんことほざくな」
馬鹿にしたように二人同時に言われては、久嗣は何も言えなくなる。
それをまるで気にしていないように、双子は"後始末"のせいで真っ赤になった手を彼に向ける。
そして行き着く先は、久嗣の唇。
優美な細い指を押しあて、紅を引くようにべったりと血をつけた。
「…心配せんでも、私らから客が無くなることはない。のう、"ご主人"や」
「…」
「それにしてもソレ、よぅ似合うておるな」
くすくすと可愛らしい低音の笑い声が二つ。
久嗣の脇を通り抜け、生々しい光景だけが残る。
「……………」
唇に塗られた誰のものかも分からない"紅"を着物の裾で乱暴に拭うと、口腔内に生臭い血痕があるような気がして、どうせまた捨てるはめになる血塗れの畳の上に唾を吐き捨てた。
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