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闇に灯る淡い燈。
蕩蕩とした豪勢な部屋の中、ツンとした独特のにおいの紫煙が形の良い唇からとろりと流れて燈を濁らす。
どこか淫靡な光景はまるで媚薬のように、男を脳髄から酔わせた。
あぁ、と感慨深い溜め息にも似た吐息を吐き、両手を無意識に伸ばす。
皺だらけの醜い無骨な手の行く先は、ただ一点。
華奢で、それでいて陶器のように滑らかで美しい首筋。
手に余るほどの細さのそれを両手でしっかりと掴む。
骨の感触が伝わり、このまま少し力を加えてしまえば簡単に折れそうだった。
今男にあるのは、"人間の命"というものを支配している感覚。
または、それに対しての背徳感。
男にとって、この上なく快感を感じられる瞬間であった。
息の根を止め、まるでその分の生気が直接流れ込んでくるかのような背筋を駆け上がる感覚。
息を荒くしながら男は、今まさにその最高の愉悦を迎えるべく、縊り殺すために親指に力をかける。
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