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それは、一瞬の出来事だった。
指が柔らかな肌を押し潰すより先に、妙な衝撃が腹に現れたのだ。
目の前にいる"彼"の艶やかな黒髪に差してある一輪の白く美しい花に、一瞬にして幾筋もの赤い模様が新たに加わる。
幾分も経たないうちに、急激な焦燥感が胸を掻きむしった。
「っ」
男は身悶え、慌てて両手を離す。
視線を移せば、脇腹から臍の辺りにかけて裂けたように開き、見るはずもなかった自分自身の臓物が赤黒い影に紛れてちらりと見えた。
薄い皮膚を裂かれ内部を暴かれるのは、意外にも痛いというより熱い。
声を発する間もなく、男は糸が切れたように横倒れになった。
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