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…これは夢か?
そうでなければ迂闊だった。
"彼"とて、所詮人間。
己の命が危険に晒されれば、誰しも正当防衛は仕掛けてくるはずだ。
しかし。
これはたかだか遊びである。
だが"彼"が手に持つ白銀の刃は、明確な殺気を持って己が腹を引き裂いた。
数十年間酒と女のことしか考えてこなかった惰弱な頭で思いつく限りの理由を挙げようにも、血が回らないのか最早瞼を持ち上げるのも億劫だったために諦める。
朦朧とする意識の中、ふと、耳のそばに熱い吐息がかかる。
同時に、先程の紫煙の香りが鼻をついた。
そして。
次の瞬間、この世のものとは思えないほどに凄艶で恐ろしい声音に鼓膜を震わされたのだ。
「娼夫に弊死(コロ)されるのも、またよかろう?」
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