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町の一角にある遊郭『通せんぼう』の当主、久嗣は、眼前に広がる惨状に思わず顔をしかめた。
その部屋に足を踏み入れた瞬間に、まずは妙な異臭が鼻を突いた。
鼻孔の粘膜にねっとりと絡み付くような生臭いにおい。
また、畳の大半を染め上げている赤黒い物質。
所々に何かの肉塊が散らばり、それはもう常人ならば吐き気を催すほどの状況である。
…だが、幾度となくその状況に遭遇してきた久嗣にとって、それはうんざりさせられるほどに見覚えがあったのだ。
兎にも角にも後始末は”彼ら”に任せるとして、今は店を閉める準備をしなければならない。
部屋を出ようと振り返ったところで、廊下の奥から影が一つ、姿を現した。
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