-ひとつ、双つ-

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この場所に今入れるのは”彼ら”しかいない。 久嗣は深い溜め息を吐き、矢継ぎ早にこちらから切り出した。 「仕事をするのはええけど、もうちぃと綺麗に出来んのんかねぇ」 日がまだ昇らない時間のために光が入ってこず、薄暗いままの廊下。 しかし久嗣が咎めを口にした途端、鮮やかな色が舞う。 完全に姿を現した人影は、中紅の美しい着物をまとい、そして少女のような可憐で愛らしい至極優美な表情で白銀の刃を手にしていた。 それは血でてらてらとした鈍い輝きを隠され、まるでおもちゃのように見えたりもする。 「主よ」 発された声は、見た目とは裏腹に低くふわりとした艶のある響きである。 少女のような面影を灯す青年は、目尻のくっと切れた瞳を細めて、薄い唇に弧を浮かべ言った。 「殺るのもやっとのか弱い私に、そのような難しいことを言わんでくれ」 薄ら笑いを浮かべ久嗣の脇を通り、その背後に広がる血濡れの畳みに足を踏み入れた。 白く華奢な足が歩くたびに、ひた…ぺちゃ…と不快な水音が耳につく。 散らばる肉片をなんの躊躇もなく細い指で拾い上げてはもう片方の手に回収していく。 美しい容姿に似つかない惨たらしい背景を目の当たりにしても、すぐそばで見ている久嗣は決して恐怖や畏怖を感じていなかった。
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