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「完全にこの件はお前の管轄だろ! 俺は無関係の領域に立ってるんだから引き込むんじゃねぇ!」
一気に湧き上がりジリジリと迫る危機感に、英雄を叩き落さんばかりの勢いで突き離す。
しかし、そうはなるかと俺の手を思いっきり掴んできた。
「この場に居合わせてる時点で僕達は一蓮托生だ! 火事場こそは協力が必要さ親友!」
「なーにが親友だ! ならこの場で絶交だ利子つけて叩き付けてやんよいいから離せ!」
胸倉を掴み合い醜い争いを始める俺たち二人を尻目に、明らかにどうしたものかと困惑しているフードの女性が申し訳なさげに口を挟む。
「あの、申し訳ありません。私達の用があるのはそちらの魔力適正が高く概念線をおおく束ねる氷路様なのです」
おずおずと放たれたその言葉に、俺たちは相反した反応を示した。
片やガッツポーズ。片や落胆し肩を落とす。
「残念だったな英雄。お前の好きなカレーうどん用意して待っててやっから安心して行ってこい!」
「そうだね。そうなら――まぁ、仕方ないか」
明らかに気落ちした様子。少し不憫だが致し方なし。俺はお前のハチャメチャにはとてもじゃないがついてはいけないのだ。あとそれはつまり俺の協力は別に必要ないってことじゃねえか。
これは生半可な努力ではどうしようもない、能力や才能によるもの。
俺はそんなものは、持っていないのだ。
「ああっ、本当ですかありがとうございます!」
親友の背中を押し、俺は数歩下がる。
「で、でも良かったのですか……?」
「はい。無理強いは出来ませんし、来てくれたら僕の気が楽だったというだけなので大丈夫です」
それでトンデモ道中に巻き込まれちゃ溜まった者じゃない。
幾度か付き合ったことはあったが、命が幾つあっても足りないような修羅場の連続なのだ。こいつの行く先は。
「あっ。ではすみません。規則なので――――」
フードの少女がこちらを向き微笑む。
その指先を俺に向け、一言。
「あの人の記憶を飛ばしますね」
そこで完全に意識が飛び、気づけば自宅の布団で寝てた。
それがセラ様の力が要因なのか否か……取り戻した記憶の断片だ。
魔術で記憶を飛ばされ、そして取り戻したこと。それが俺に特殊魔力が宿る最大の要因だったようだ。
いや、何してくれてんねん。
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