補導

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隣の別室に連れて行かれる。 扉の上の案内には『取調室』と書かれていた。 マジか……。 部屋に入ると、想像通り。 こんなにベタでいいのっ? っていう位想像通りの部屋だった。 中央に置かれたグレーの事務デスク。その上には卓上の蛍光灯。パイプ椅子が二脚。 さすがに灰皿はなかったな。 『じゃあ、最初から全部確認すっから。そこ座れよ』 哀川さんは、見た目も、振る舞いも、口も悪いが、人情家だった。 下町のアニキという感じだ。 アニキは、のたまう、 『じゃあ全員の席順と服装から』 ――そ、そこから!? 白い紙を取り出した翔さんは、鉛筆で書き出す。 一人一人、思い出せる範囲で話すレントン。 この時にレントンの職業候補から『警察官』は消えた。 こんなに細かく、しかも鉛筆で書かなくてはいけない職業なんて無理。 自分が自分を一番分かってる。そう勘違いしていた時期でもあった。 軽く一時間以上それだけで経過する。 時計を見ると正午を過ぎていた。
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