補導

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レントンは、こう思った。 もしかしたら『カツ丼』出るんじゃね? 『取り調べを受ける男』は生れながらにしてポジティブな男だった。 カツ丼喰ったらネタになる、と。心から思っていたのである。 『じゃあ、次は誰が何を飲んだか教えてくれ。腹も減ってきただろ』 アニキ! これはカツ丼への前フリ? 「えーと、モスコミュールにカンパリオレンジです」 さくさくと答えるレントン。 必死に書き写す哀川さん。 カツ丼は…… 拘束されて三時間以上が経過する。 レントンの心は折れていた。あらいざらい話してしまう犯罪者の気持ちが分かった17歳の春。 『刑事さん、もう疲れました』 この台詞が身に染みて分かったのである。 時刻は午後三時。 尋問を受けてから四時間。 二時間の飲み会の内容を詳細に書くとかかる時間である。 『大体これでいだろ。実は未成年に酒呑ませた店を摘発しようと思っててな。もちろんお前らには反省文書いてもらうぞ』 哀川兄貴とお別れである。 レントンの頭の中はもちろん ――カ、カツ丼は? そんな、 『Vシネマの"V"って何?』 っていう話。 ソイヤ! ソイヤ! ※お酒は二十歳になってから。
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