館のもう一つの姿

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絶望感が溢れるが、彼女に任せるしかない。 彼女なら何かできる確信でもあるのかもしれない。 俺は彼女を見守ることにした。 そして奇跡か必然かはわからないが、彼女はアストラルのNPC戦をクリアしていった。 最初はたどたどしい手つきだったが、徐々にゲーマーとして覚醒していった。 彼女は短時間でプロゲーマーの領域に達していた。 才能があるから成せることか。 はたまたは元より実はやっていたのか。 真実はわからないが、気付けば最後のCPU戦になっていた。 「あ、あのラストは…!?」 俺は知っていた。 ラストCPU戦はクリアした人間が世界で三人しかいなかったと言われる神が付くほど難易度のボスだと言うことを。 名前は覇王。 リーチ、破壊力、素早さが揃ってるラスボス。 格ゲーではバランス崩壊が起きてるチートキャラ。 正直な話、これが※プレイアブルキャラではないことが救いである。 ※プレイアブルキャラ…ゲーマでプレイヤーが使用できるキャラクターのこと。 それに対して彼女のキャラはすこぶる相性が悪い。 それに対して「高野美紀」の持つ勝る利点はカウンター系が最強なこと。 それだけである。 カウンター系キャラの「高野美紀」は「覇王」に対して相性が悪い理由は、カウンターのモーションに入る前に攻撃を入れられやすい為にカウンター系キャラとしての意味がなくなるのだ。 相性が悪いと言ったのはそういう理由だ。 「大丈夫です、私は勝ちます。」 御桜さんは俺の心を読んだように言ったのだ。 「…疑ってごめん。」 「仕方ないですよ。強い敵が目の前にいたら誰だって不安にもなりますよ。」 「とにかく頑張って御桜さん。」 「はい、頑張ります。」 そう彼女は笑顔でこれから始まる戦いに集中した後、アーケード機体のレバーを握った。
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