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自信がない、おどおどしている、目が合わせられない、喋れない。以上、僕の特徴。身に刷り込まれたこの劣等感は、僕の視線を地に落とした。
結果、僕はいつも俯いていた。からかわれて、余計にうなだれる。隣に居てくれた友達は、もういない。長い中学生活、さっさと終わってくれと何度も願った。
今日もまた、地面の僅かな変化のみを視界に収めながらとぼとぼ帰路についていた。心とは裏腹に、晴れ渡る空。降り注ぐ日差しが鬱陶しかった。
ため息を漏らしかけた時、地面に自分の顔が映った。それは前日の雨による、大きな大きな水溜まり。思わず立ち止まってまじまじ見ていると、見たことのないような景色が僕の顔を中心に広がっていた。
透き通った風景に映る太陽は、散々照りつけていた不機嫌さが嘘のように、後光のように優しく輝いている。垂れ幕のように脇を埋める雲。透明に近い青空。自分が見てきた景色を遥かに凌駕する、素敵な瞬間が映っていた。
みんなは多分知らない、僕しか知らない素敵な瞬間。僕だけが見たこの刹那。取り巻いていた憂鬱が、透き通るように晴れた気がした。
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