第壱夜

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 支度を整えた俺は、荷物を持って裏門に向かう。  早く出よう……。ランディに見つかる前に。ランディが目を覚ます前に……。  本当は、お礼を言いたかった。特にランディには。  けど俺は、反省してない殺人鬼。殺人鬼がお礼なんか、言うわけがない。そんな事をしたら、不自然だ。 「リュカ」  裏門の前まで来て、誰かが後ろから俺を呼び止めた。とっても馴染みのある、聴くだけで安心出来る声。 「……起きたんだ」 「話、聴いたよ。ジジイから」  声の主、ランディは淡々とそう言う。 「そう。じゃあ俺がどういう判決受けたかも分かってるでしょ?」 「分かってる。けど、納得出来ない」  ほらやっぱり。ランディがそう言うのは分かってたんだ。 「どうして……どうして俺が暴走した事言わなかったんだよ!? そうすりゃ、お前は助かったのに……。どうして俺の罪を被ったり、したんだよ……」  今にも消え入りそうな、泣きそうな声でランディはそう言った。  そんなの……なんで俺がランディを庇ったかなんて、ランディと同じ理由に決まってるじゃない。 「ランディは俺の為に怒ってくれたんじゃん。そんなランディに、罪を着せさせたくない」 「でも、罪は罪だ。罪を犯したら罰を受けなきゃいけない」  ランディは悲しげな声で俺に言う。 「……ランディは罪は犯してない。だって、俺がランディに殺してって頼んだんだもの」 「デュランさん達に、言う気はないんだな?」  流石ランディ。今の俺の言葉であっという間に見抜いた。  俺が真実を話す気が、ない事を。
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