第壱夜

13/14
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/321ページ
「あるわけないじゃん。そんな事して、ランディに会えなくなったらヤダもん」  俺は、できるだけ平静を装う。  悲しんでいる事を悟られないように……自分を隠すように……。 「…………分かった……。じゃあ、俺も行く」  ランディは突然、そう言ってきた。  俺は驚いてランディを振り向く。  ランディが……泣いている?  ランディは立ち尽くして、荷物を持って泣いていた。 「俺だって、リュカに会えなくなるのは嫌だもん……! それが俺のせいだなんて、もっと嫌だ! いくら頼んだのがリュカとはいえ、手を下したのは俺だし……同罪だろ?」  ランディは涙を溢しながら、それでもはっきりと意思の籠った目で俺を見ていた。 「……もう一生、家族に会えないかもしれないんだよ? それでいいの?」  こんな目をしたランディは、テコでも動かない。だから、一応その確認だけしておく。 「親父には会えないかもしれないけど……お袋には会えるだろうし、いい!」  ランディははっきり、言い切った。  ランディもシェラハさんも悠久の時を生きる事の出来る、不老不死の死神……。  家族より俺なんかを取るなんて……馬鹿なんだから。悪魔の、俺なんかを…………。 「…………馬鹿。勝手にすれば?」  俺はそう言って、裏門を潜る。  後ろからパタパタ走ってくる音がする。 「じゃ、勝手にする」  すぐ隣で、ランディの声が聞こえた。  でも、俺は振り向かなかった。
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!