第壱夜

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 ~デュランside~ 「…………行っちゃったよ? 2人とも……」  どんな趣向で作ったのか、裏門の見える兄さんの書斎から窓の外を眺めながら部屋の主に訊ねる俺。  隣ではダーヴァも、椅子を持ってきて外を眺めている。  外に見えるのは、裏門を潜って並んで歩く俺とダーヴァの孫。 「あれ、2人って?」  部屋の主こと、俺の兄さんはそう聞き返してくる。 「リュカとランディ」  ダーヴァは外を眺めたまま答える。 「びっくりしたぁ。てっきりホークが行ったのかと思った」 「直に跡を追うと思うよ」  相変わらず笑っている兄さんに、俺はそう言ってやった。  あの血の海……何があったかなんて、容易に想像出来る。 「どうするの? 兄さんがリュカの言い分認めちゃったから、こんな事になったんでしょ?」 「分かってる。ちゃんと考えがあるから」  俺はやり場のない怒りを抑えながら兄さんを振り返る。  兄さんは、いつもと変わらぬ笑顔で座ってこっちを見ている。 「だったらさっさと動いたらどう?」  俺はつっけんどんに言ってやる。 「怖いなぁ。ちょうどそろそろ、調べ物に出掛けようと思ってたんだってば」  それでも笑いながら、立ち上がる兄さん。調べ物って……!? 「そんな怖い顔しないでよ。城下町に行くだけだから、今日中に帰ってくるよ」  少し慌てた様子でそう言って、さっさと出掛けた兄さん。  あんな事言ってるけど……本当に大丈夫かなぁ?  
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