第弐夜

7/12
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/321ページ
「……ごめん。俺が勝手に暴走したんだ」  突然、ランディがそう切り出した。 「言うな、て言ったじゃん」  俺はちょっとムッとして、そう言う。  ランディはなにも悪くない。止め切れなかった、俺が悪いんだ……! 「だって、リュカ話そうとしないじゃん。ホーク達なら平気だって。第一、わざわざここまで追ってきたんだぜ?」  ランディは俺に、ちょっと辛そうに笑ってみせた。そしてホーク達に事情を説明する。  ……ランディに隠し事させるのは無理なのかなぁ? あんな辛そうな笑顔、初めて見た……。 「……んで、気が付いたらベットにいた。たぶん、暴走したんだと思う。リュカが全然話してくれないから、どんな事をしたとかわからないんだけど……」  ランディはそう言って、レモンティーを一口飲んだ。  ランディが暴走した時なにをしたのか、俺は誰にも言うつもりはありません。 「聞いた話では辺り一面、血の海だったらしいけど……。リュカ兄は怪我とかしなかったんだ?」 「そうだ! リュカ。俺、お前に怪我とかさせなかった!?」  ホークの一言で、ランディが弾かれたように俺に訊ねる。 「うん? したよ」  あえて嘘をついてみる俺は、天の邪鬼? 「嘘!?」 「嘘」  ホークとランディが声を揃えて驚いたところで、あっさり嘘をバラす。  この2人をからかうには、このくらいがちょうどいいんだ。でないと、2人とも本気にするから。 「そういうところで嘘はやめようよ、リュカ兄……」  何故か脱力したっぽいホークが、脱力した声で俺に言ってきた。だったら余計、嘘言ってやる。 「……あ、今『余計に嘘を言ってやる』とか思ったでしょ?」  ランディに考えを読まれちゃった。 「……なんで分かったの?」 「なんとなく、分かるもん。全く、天の邪鬼なんだから……」  ランディは、でも楽しそうに笑ってくれた。
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!