第弐夜

8/12
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/321ページ
「とりあえず、知りたかった事は分かったんだから帰りなよ」  俺がホークをそう促すと、ホークはあっさり「ヤダ」って言った。 「今度の今度は俺、本当に城に帰れないんだよ?」 「分かってる。けど……僕はリュカ兄について行く」  ホークは俺の目を真っ直ぐに見て言う。その目に迷いは、ない。  こうなったホークは岩より頑固な事を、俺は知ってる。 「……勝手にすれば~?」  もうなんにも言うこと聞いてくれないから、俺はむくれてそっぽをむいてそう言ってやった。 「わぁい! リュカ兄、ありがと~!!」  ホークは嬉しそうに笑顔を見せる。 「……私も、一緒に行っていい?」  今まで黙って話を聞いていたミルカが、俺達に訊ねる。 「ミルカまで、来る事ないんだぞ?」  ランディがちょっと驚いたようにミルカを見て言う。 「分かってる。けど、行きたいなって……」 「アセルスさんがいいって言ったらいいよ」  俺はミルカにも許可を出す。  アセルスさんは、ミルカのおばあちゃん。家業である情報屋として世界中を飛び回っている両親の代わりに、16までミルカを育ててきた人。  ……あれ? 「ホーク。今いくつだっけ?」 「はい? なんで突然、歳を訊かれてるの? 僕は16。ていうか、忘れないでよ!」  そっかそっか。ミルカと同い年だっけ。 「やっぱり、リュカだね……」 「俺が俺じゃなかったら、俺は誰なの?」  ミルカが何故か納得した感じだったから、言い返してみた。 「そういう意味で言ったんじゃ……。とにかく、酒場でおばあちゃんに訊いてくるね」  ミルカはそう言って、家から酒場に続く通路に向かった。  ちなみに、もうひとつの家業である酒場はこの家の裏にあったりする。  酒場のマスターと情報屋が家業かぁ……。酒場のマスターって、なんか楽しそう。
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!