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ミルカの支度が整ったところで、俺達は村を出た。
「ところで、どこに行くの?」
ホークがそう訊いてくる。
「南」
「また大雑把な……」
俺が一言「南」って言えば、呆れられた。ホークに。
だって、ランディがあったかいところがいいって言うんだもん。
「じゃあ、南に行こうか」
ミルカは長く伸びた髪を風になびかせて楽しそうに笑いながら言う。
「髪は縛らないの?」
肩にかかって、そろそろ肩甲骨に届きそうな深緑のミルカの髪を見ながら俺は訊ねる。
肩にかかった髪は、けっこう邪魔なんだよね。
「うん。なんとなくこっちの方がいいなって……」
「ふぅん」
ミルカの答えに、俺は相づちだけ打った。
「ミルカは大人しいから、そっちの方が似合うよ」
着膨れランディが笑ってミルカに言う。今日の気温は、体感温度にして約5度。
「ありがとう」
ミルカは嬉しそうに笑う。
「でも、シャルなんかだと絶対似合わないよね」
俺はシャルを思い出しながらぼやく。
暴力的なシャルに、長髪は似合わない。なんなら、賭けてもいいよ。
「リュカ兄、それは言っちゃダメだって……」
ホークが困った顔をする。
遺跡の中を近道しながら、俺達はそんな世間話をする。馬鹿言ってみたり、ホークをいじってみたり……。
楽しいけど……やっぱりなんか、寂しいな。
「ホーク~」
「なに~?」
「死刑ね」
そんな寂しさを忘れたくて、弟に死刑とか意地悪言ってみる。
明らかに、ホークは動揺し始めた。
「ちょっ、ちょっと待って! 僕何も言ってないし、してないよ!?」
「嘘」
ランディとホークは、からかいがいがあって楽しいな~。
「びっくりした~……」
ホークはほっとした顔でそう言った。
……ホーク、いつか城に帰さなきゃいけないなぁ……。
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