第弐夜

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 1週間の船旅を終えて陸地に足をつけた俺達。うん、ミセティルより少しあったかい。 「良かったね、ランディ。寒さが和らいだよ」  俺がそう言ってやると、ランディが「うん、良かった」って返してきた。でも、ランディにはまだ寒そう……。 「ランディ兄、まだ寒そうだね……。僕達、このくらいがちょうどいいんだけどな」  長袖に薄いパーカーを羽織ったホークがちょっと困ったような顔をしている。  最近分かった事だけど、俺とホークは服の趣味が似てるらしい。今日だって、2人とも似たようなカッコしてる。 「とりあえず、街道を南下しようか?」  ミルカがそう訊いてきたから、俺はコクコク頷く。 「リュカ。寒いよ、寒いよ……」 「まだ寒がってる」  ランディは何故か、俺に必死に寒い事を訴えてくる。けど、体感温度の差はどうにもなりません。 「どんどん南に行こう。そうすれば、直にあったかくなるから……」  ホークが必死にランディを宥めてる。でもランディはまだ、寒い寒いって言ってる。まぁ、魔界に冬はないもんね。 「生粋の魔界育ちの俺には寒いよ……!」 「よしよし」  『生粋の魔界育ちの』ランディが震えながら寒がってるから、俺はランディの頭を撫でてやる。駄々を捏ねた子どもを宥めるように。 「普段と立場が逆だね」  ミルカが俺達を見て、楽しそうに笑いながら言う。  周りの人達が俺達を見て、クスクス笑ってる。 「ほら赤ちゃん、行くよ」 「俺赤ちゃん違うから!」  俺がランディを「赤ちゃん」って言ってやれば、ランディが全力でそれを否定した。周りがドッと笑い出した。
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