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~ランディside~
「桜、散っちゃったね~……」
リュカが残念そうに、校庭の桜の木を眺める。
どうもリュカは桜が好きみたいで、散ってから1、2週間は時々ふっとそう呟く。ちなみに、今日で5月に入った。
「リュカ。好きなのは分かるけどもう5月だぜ……」
俺はちょっと呆れながらリュカに言う。
「そうだけどさぁ~……」
リュカは口を尖らせてそう言ったあと、また校庭の木を見る。
俺はそんなリュカを眺めたあと、アレについて訊いてみる。
「リュカ。面談どうだった?」
他のクラスより明らかに早い面談。三者じゃなくて二者面談だけど、しかしやっぱり早い気がする。
先生曰く「進路は早めに考えておいて損はない」らしい。でもさ、あんまり急かして上手くいかなくなったらどうすんだろ……?
「うん。音大行った方がいい、て言われた」
「そりゃそうだ」
リュカはやっぱり、音大を勧められたらしい。まぁあの歌声聴けば、誰でも勧めると思う。
実際、リュカの音楽の成績はオール5。たぶん、特待生で行ける気がする。
「んで、リュカはどうしたいの?」
俺が訊ねると、リュカは「わかんない」って笑う。オイオイ、いくら面談が早かったとはいえ今の時期にわかんないのはキツイぞ……。
「ランディは、どんなのが向いてると思う? 俺」
ようやく歩き出したリュカに従って、俺も歩き出す。
ん~、リュカに向いてる職業ねぇ……。
「やっぱ歌手?」
「やっぱ?」
俺が歌手を挙げれば、リュカもだいたい予想してたらしくそう言う。
「でも、歌を歌ってお金をもらう、てなんか嫌なんだよね」
リュカは空を見上げて呟く。昔のリュカも、そう言ってたっけ……。ホント、人が良すぎだよ。この2人は。
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