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「ところで、ランディはどうだったの?」
リュカがそう訊いてくる。
「進路の事? 言われたけど~……まぁ俺、死神だから」
俺はそれだけ答えておく。
そんなお袋みたく、転職繰り返しながら正社員とかやっていけないって……。
「ランディはけっこうかっこいいから、モデルとか出来そうだよね~」
リュカは呑気にそんな事を言う。
「俺はテレビに出る仕事は一生出来ないよ、死神だから」
視聴者に顔を覚えられたら、一大事だしな……。
そこで俺はふっと、ある事を思い出した。
「リュカ~。俺、明日友達とアキバハラに遊びに行くけど一緒に行く?」
友達がアキバハラに行きたいけど、どの電車に乗ればいいかわからないって言っていた。だから俺が連れて行く事になったんだけど、リュカに予定を聞くのをすっかり忘れてたんだ。
あの辺りは何度か行った事もあるから、電車や運賃表の見方もなんとなくわかる。
「? アキバハラって何?」
「ほら、東京の電気街だよ。有名な」
俺がそこまで言って初めて、リュカは分かったらしい。
「それは『秋葉原』だよ、ランディ」
……ヤベェ、素で間違えてた…………。
リュカはちょっと考える仕草をする。家までは、あとはこの道を真っ直ぐ行くだけ。
「そうだね~……。行った事ないし、いい機会だから行ってみようかな……?」
「よし! 明日は10時に家を出るかんな」
俺はリュカに出発の時間だけ伝えておく。
リュカは笑顔で「うん!」って言う。
そういえば……なんかず~っと、忘れてる事がある気がするんだよなぁ……?
時々思い出す、この感覚。さて、あとは何を忘れてたっけ……?
え~と~……。
…………。
そういえば、3月入ってからだっけ。何か忘れてるなぁ、て思うようになったの。という事は、原因は2月か?
2月にあった事……。
…………。
…………あ……。まさか……!
「リュカ。俺、お前の誕生日、祝ったっけ?」
そういえばあの日、急にバイトが入った気がする……!
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