24人が本棚に入れています
本棚に追加
/321ページ
次の日、アキバハラ……違った。秋葉原に着いた俺達は、とりあえず色んな店に入ってみた。
「人、多いね~」
リュカがそんな、アホな事を言う。あのな、ここは東京だぜ……。
「東京ってなんであんなに電車多いんだよ。運賃表読めないし」
ここに来たがってた俺達の友達・翼が悪態をつく。そういや去年、翼が暴走族に絡まれてたっけ。
「そこは……まぁ……都心だし……」
俺は適当に、そう返す。翼と俺が仲良くなったのは、あの暴走族の一件以来。
「うわぁぁぁぁん……」
子どもの泣き声が聞こえて、思わずそっちを見る俺達。
そこにはコケたのか、膝を擦りむいた子どもがいた。隣には、その子の兄らしき男の子がいる。兄の方が10歳近く見えるから、2人でお使いの途中かな?
「どうしたの?」
気がつくと、もう既にリュカはその子の所にいた。まぁったく、お人好しだよな……。
「イタイよぉ……」
「コケちゃったんだね。ほら、泣かない泣かない」
リュカは笑顔で、泣いている男の子を撫でてやる。しかし、周りの雑踏を歩く人達は全くそれを気にする気配がない。
「うえぇぇぇぇ!」
まだ4歳くらいの弟君は、やっぱり泣き続ける。あのくらいって、怪我がなくともちょっと転んだだけで泣くんだよなぁ~……。
リュカは困った顔をして、少し考える。
そして「よぉし」と言って大きく息を吸って、右手を胸元に当てて歌を唄い始めた。
その透明感ある美しい歌声に、道行く人達が思わず足を止めて聞き入る。
最初のコメントを投稿しよう!