仲直り

妻と旅行に行く事にした

先日、些細な事で喧嘩をしてしまったので、仲直りの旅行と言う訳だ

仕事の都合もあるので、たいして遠くには行けないし、宿の予約もギリギリになってしまったが

妻のご機嫌は戻ったようだ

しかし、それも宿に着くまでの話だった

何も考えずにネットで予約した旅館だったが、バブルの頃に無計画に増改築を繰り返したのだろう

違法建築スレスレの迷路のような造り

何処にも行けない階段

その中でも、最も古い場所だろう部屋に通された

窓を開けても見えるのは隣に増築された壁だけだ

妻は湿ったような畳の目の数を数えるように俯いて一言も口を聞いてくれない

「どうせ寝るだけだ。もし、不満だったら夕食をキャンセルして何処かへ食べに行こうか」

笑いかけるも、じっと畳のささくれを弄りながら、ぶつぶつと陰気に独り言を呟いている

せっかくの旅行なのにこんな旅館になってしまったから、不満なのは分かるが、来てしまったものは仕方ない

妻には楽しむと言う能力がないのだろうか

ため息をついて窓を閉めた