仲直り

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妻はこうなってしまうと、何を話してもこちらを見ようとはしない 諦めて重いため息をついたところで仲居が挨拶にやってきた 本日はお泊まり頂いてありがとうございます お決まりの文句を澱みなく続ける 話をしない妻に嫌気が差してしたので、これ幸いと話かけた しかし、この仲居。ニコニコと笑って受け答えをしてくれるものの、何か違和感を感じる 妻はどう思っているだろうと振り返っても、まだ俯いたままの姿勢を崩していない 仕方なく1人でもう一度仲居を観察してみる 表情が、あまり動かないせいだな 笑顔を貼り付けたまま、こちらに焦点を合わさずに喋る仲居が少し不気味に感じた あ…… 決定的な違和感の正体を見つけてしまった…… 首が…… 着物の襟から見える首が異様に長い これはまるで…… 妻は俯いたままユラユラと体を動かしながら、畳を見詰めている 仲居は失礼しますと頭を下げる まるで、首を吊った女2人に挟まれてるような気分になる 夕闇の迫る薄暗い部屋で、女2人はいつまでも首を垂らし続けていた
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